保育士という仕事に魅力を感じているものの「業務が多いみたいで…」「年齢的に無理かも」と不安を抱えている人、保育士資格はとったけれど「残業の多いらしい…」と保育園で働くことをためらっている人は少なくないようです。
でも、いま、保育士不足が叫ばれていることもあり、保育士さんが働きやすい環境を整える保育園が少なくないこと、ご存知でしょうか。
たしかに、業務も多く、責任も重いお仕事ではあるけれど、子どもの笑顔や成長を目の当たりにできて、さらには「ありがとう」といわれる…、保育士は、やりがいのある、本当に幸せな仕事といえるのです。
ここでは、保育士資格のとり方から、仕事の流れなど、気になるあれこれをまとめてみます。迷っている方が、一歩踏み出すきっかけになればと思います。
保育士の仕事内容
保育士は、子どもを護り育み、その家庭も支援する、社会に欠かせない大事な仕事です。実際には、どんな役割を担っているのでしょう。一日の仕事の流れをおおまかにご紹介します。
<午前>
早番の保育士が、施設の換気や安全確認をし、園児を受け入れる環境を整えます。続々と登園してくる親子に対して、保護者の話を聞き、連絡帳を確認、さらに子どもの体調を確認したりします。中番の保育士も加わって、絵本を読み聞かせたり、一緒に遊んだりしながら、こどもの様子を観察します。適宜トイレ対応もしますが、それも体調チェックの一環となります。朝の会であらためてご挨拶をしたのち、お散歩に出かけます。安全に気をつけながらも、のびのびとした遊びの時間を過ごせるよう心がけます。
<昼>
お散歩後には、手洗いなどをして清潔を保ちます。配膳をして、給食を食べるお手伝い。その後は、パジャマ着替えのお手伝いをして、午睡に入ります。寝かしつけてからが、保護者への連絡帳等の書類を書くメインの時間帯となります。ただし、午睡の間も、子どもたちの様子を見守る保育士をおき、どんなときでも安全確保につとめます。
<午後>
午睡から目覚めた子のトイレや着替えの対応ののち、おやつ。その後は園庭や室内で、遊びや制作などをして降園までの時間を過ごします。保護者が順次お迎えにきますので、その都度、保育中の様子などを申し送ります。
延長保育の園児がいる場合には、遅番の保育士が寄り添い、必要なら軽食を提供します。
園児が帰ってからは、翌日の準備や行事に向けた会議や準備などを行います。清掃やおもちゃ・絵本のアルコール消毒などは、保育士が担う場合もあれば、保育補助や専任スタッフが担う場合もあります。
いずれの場面でも、主に保育を担うのは担任・サブ担任ですが、パートタイム保育士や保育補助スタッフも加わってひとつのチームとなり、無理のない保育運営につとめます。様々な形態の働き方があるからでしょうか、新卒保育士、子育てがひと段落したママ保育士、孫育て年齢のスタッフなど、多様なスタッフがいて、保育に厚みが生まれています。
● 保育士の仕事内容 書類ってどんなもの?
<毎日>
○連絡ノート:主に担任が午睡中に記入。保護者とのコミュニケーションをはかるもの。保護者からは、食事・睡眠、体調を中心に家での様子を記入していただき、園からは保育中の様子、食事・午睡、体調などをお伝えします。困ったこと、できないことよりも、できるようになったこと、褒めてあげたいことなどを率先して記入する方針の園もあります。また、連絡帳は、保護者とのコミュニケーションツールであり、悩みをキャッチするきっかけとなる場合もあります。
○睡眠記録:午睡の見守りの際に記入。睡眠時突然死症候群など、午睡中の事故を防ぐため。
○排泄記録:排泄介助の際に記入。健康管理の一環として。
<指導計画>
○年間保育計画
○月間保育計画
○週間保育計画
年間保育計画はこれからの1年間どのような保育をするかの大枠となるもので、年齢や発達に応じ、子どもの状況や発達を見通して作成します。この計画をもとにして、月間、週間と短く区切って具体的に生活に即した保育計画をたてます。いずれも担任が1年、毎月、毎週、スタッフと意見交換しながら作成します。
● 保育士の仕事時間
保育園の開所時間は、園によって多少異なりますが、一般的には7時〜18時を基本とする場合が多いです。延長保育は20時までを基本に、認可外では22時までという施設も多くみられます。延長保育は施設の規模、家庭のニーズによって設定されていて、地域性もあり、多様化がすすんでいます。
保育士のシフトは通常、早番、中番、遅番の3つに分かれています。早番は7時頃から16時頃、中番は9時頃から18時頃、遅番は10時半ごろから最終までといった時間帯に分ける現場が多いですが、パートタイム保育士をまじえて5交代シフトにするなど臨機応変に対応しています。土曜勤務は交代制で、4週6休、あるいは7休という施設が多いようです。
残業の状況は、施設によるといっていいでしょう。行事の前後は残業時間が増える傾向にはありますが、近年では、残業を抑えるためにパートタイム保育士や保育補助を増員したり、行事の装飾の手作りを控えたりと、業務を合理化する園も増えています。
● 保育士の仕事 一日の流れ
保育園によって詳細はもちろん違いますが、一般的な流れをまとめます。
<午前>
7:00 早番保育士が出勤
→開園前に換気や温度管理などの環境整備、安全確認をします。
7:15 早朝時間外保育の園児が登園
8:00 通常保育の園児が登園
→続々と登園する子どもの見守り、トイレ対応などをしながら、保護者と情報交換、連絡帳の確認、体温測定等の健康チェックをします。
9:30 朝の会
→今日のお散歩先や制作内容などをお話しし、園児の気持ちを落ち着かせます。
10:00 お散歩
→体調不良と判断した園児は室内遊びにすることもあります。
11:45 お散歩から帰宅。手洗いやシャワーで清潔を保つ
12:00 給食
→ 配膳をして、発達に応じた食事のお手伝いをします。
13:00 歯磨き、パジャマに着替える
午睡
→午睡中に連絡帳を記入します。行事前はその準備や会議を行うことも。
14:45 着替え、おやつ
15:30 園庭や室内で遊ぶ
→季節感をもたせた造形物制作や、行事前の練習などをする場合もあります。この時間帯はクラスや年齢に関係なく一緒に過ごすなど、保育に変化をつけることがあります。
16:15 帰りの会
保護者がお迎え
→保護者一人ひとりに、一日の様子をお伝えします。園児が少なくなっていくこの時間に明日の準備や保育日誌の記入などをします。
18:00 延長保育開始
20:00 遅番保育士退勤
● 保育士の仕事で大切なこと・大変なこと
保育士として求められること、欠かせないことはなんでしょう。基本中の基本となるのは「子どもへの愛情」であることは、いうまでもありません。保育士は「目の前の子どもにとって最善なものはなにか」を常に念頭に置いて、日々の保育計画をたて、その子の成長発達に寄り添いながら、安全な保育時間を提供することが求められます。また、子どもを大切にするためには、その保護者を支援する、子育てサロンといったものを開き地域の子育て環境をよくするといった視点も欠かせません。保護者の悩みを聞き、関連情報をお伝えするなど、必要な社会資源につなげていくことも大切な役割です。
保育士は、いわば子ども相手の肉体労働ですから、厳冬の散歩がきつかったり、腰痛が悪化したりということもあります。ですが、子どもの成長や笑顔を見られたり、保護者の方から感謝の言葉をいただいたりすると、疲れもふっとんでしまうのは、どの保育士も同じでしょう。
重い責任をもつ専門職という点から、もっとお給料があがってもよいのではと多くの人が感じていると思います。保育士不足という状況を受けて、給与や勤務時間など待遇を見直す施設もあり、今後のさらなる改善に期待したいところです。
● 保育士になるには
保育士資格をもっていなくとも、保育補助といったお仕事につける場合もありますが、資格保有者限定で求人をしている園は少なくありません。保育士資格をもっているかどうかは、就職の際に有利なのはもちろん、就職してから待遇に差がつくといったこともあります。なにより、資格取得にむけて専門知識をしっかり学んだことは、保育への自信にもなり、園を利用する親子さんにとってもメリットがあるといえます。
保育士資格を取得するには、大きく2つのルートがあります。
ひとつは、都道府県知事が指定する保育士養成施設で相当の単位を履修し、卒業することです。同じ夢をもつ仲間といっしょに学べることは、学生時代には大きな励みとなりますし、実際に現場に出てからは仕事の悩みを共有し、スキルを高め合えるというメリットがあります。
もうひとつのルートは、厚生労働省によって行われる国家資格に合格することです。「保育原理」「子どもの保健」など8つの科目試験に加え、「造形表現」「音楽表現」「言語表現」の実技科目からいずれか2つを選択して受験します。合格率は、年によってばらつきはあるものの10〜20%です。受験には年齢制限はなく、独学で挑む人、通信教育で学ぶ人もいます。合格した科目は3年間有効になるため、この制度を利用して、長期計画をたてて受験にのぞむこともできます。
なお、大学・短大を卒業している場合は、保育士とは関係のない学科であっても受験資格がありますが、高校・専門学校卒業などの場合には受験するのに条件があります。保育関係施設で実務経験がある場合なども、細かく条件が定められています。くわしくは一般社団法人全国保育士養成協議会サイトhttps://www.hoyokyo.or.jpで確認しましょう。